ルーメンアシドーシス
- 2014-06-19 (木) 15:42
ルーメンアシドーシスは、ルーメン内のpHが低下することによって起こる消化障害です。
通常、ルーメン内のpHは有機酸の発生と唾液による緩衝、そしてルーメン壁からの吸収がバランスよく保たれています。しかし短時間、かつ大量の有機酸が発生すると唾液による緩衝やルーメン壁からの吸収では処理しきれず、pHが低下します。この状態がルーメンアシドーシスです。
ルーメンアシドーシスの症状は
①水様~泥状の異臭便
②第1胃(ルーメン)膨満
③他の牛と比べ、反芻が少ない
④採食量が減る
などがあります。さらにpHが低下した状態が続くと(通常5.2以下)ルーメン微生物叢は正常と異なり、主にL-乳酸を発生させるStreptococcus bovisなどが主体になります。またpHの低下に伴い、乳酸をプロピオン酸や酢酸に変換する乳酸利用性細菌が消失することで、乳酸の蓄積がさらに促進され、悪循環に陥ります。またルーメン内のグラム陰性菌の死滅によりエンドトキシンが大量に放出されるので上記以外の症状に加え、蹄葉炎による跛行を示すことが多くなります。
ルーメンアシドーシスの予防には、”ルーメン発酵の安定”と”十分な反芻による唾液分泌”できる飼料給与が必要です。
分離給与の場合は嗜好性の高い牧草を多く与え、配合飼料の給与回数を増やす(1回3kg程度まで)ことが望ましいでしょう。TMR給与の場合は必ず不断給餌を行い、水分量の目安は50%程にすると選び食いが少なく、ルーメン発酵の安定性を保つことができます。また有効繊維確保のために乾草類を多く入れましょう。
(生産支援室 獣医師 前谷)