ビートパルプって?

「てんさいからビート糖を製造する過程で生成された製糖副産物です」

てんさい(写真1)とは、日本では北海道を中心に栽培されている、見た目がダイコンに似ているほうれん草と同じヒユ科の植物です。白い根の部分に糖分を蓄えます。

図1はてんさいからビート糖への製造工程の概略を示しています。てんさいを細断し、温水で糖分を浸出した残渣がビートパルプです。このビートパルプを乾燥させたものが乾燥ビートパルプであり、現在、流通しているものは、ほとんどペレット状です。主に乳牛用の飼料として利用されています。

ビートパルプは嗜好性が良く、単体もしくはTMRに混合し給餌することができます。

ビートパルプって?

ビートパルプの含有ペクチン

「ビートパルプの特徴は、ペクチンの含量が多いことです」

ビートパルプに含まれるペクチンは繊維の一種であり、ルーメン内の微生物によって分解されると、主に酢酸が生成されます。また、ペクチンの消化速度は糖やデンプンと比べて緩やかです(図2)。さらに、ルーメン内の揮発性脂肪酸の割合が酢酸優勢である時はpHが6.0~7.0に保たれるので、ルーメン発酵の安定につながります。

表1でトウモロコシ、ビートパルプ(乾)ならびにチモシー乾草のNDF、OCWおよびペクチン含量の比較を示しました。ビートパルプは、トウモロコシおよびチモシー乾草に比べてペクチンの含量が多いことがわかります。

以上のことから、乳牛にトウモロコシなどを給与するよりも、ビートパルプを給与する方がルーメン発酵の安定と乳脂率の向上に貢献します。

ビートパルプの含有ペクチン

ビートパルプは粗飼料?配合飼料?

「ビートパルプは粗飼料と配合飼料の中間的性質をもつ飼料です」

ビートパルプは粗飼料ならびに配合飼料どちらに分類されるのでしょうか?

表2にトウモロコシ、ビートパルプ(乾)、およびチモシー1番乾草(開花期)の化学組成を示しました。

まず、中性デタージェント繊維(NDF)の主成分はリグニン、セルロース、ヘミセルロースであり、総繊維と近似しています。次に可消化養分総量(TDN)は飼料のエネルギー含量を示す指標で、消化吸収される養分量を合計したものです。

ビートパルプは、NDFとTDNがともにトウモロコシおよびチモシー1番乾草の中間値を示しています。以上のことから、ビートパルプは粗飼料と配合飼料の中間的性質を持つ飼料であることがわかります。

ビートパルプは粗飼料?配合飼料?

産地による消化率の違い

「国産ビートパルプは消化率が高いです」

日本では現在、国産のビートパルプ以外にベトナム、タイ産などの外国産のビートパルプが流通しています(2020年財務省「貿易統計」より)。

表3に国産ビートパルプと外国産(アメリカ、中国)ビートパルプの消化率と栄養価について示しました。国産ビートパルプは乾物、粗蛋白質および中性デタージェント繊維(NDF)の全ての消化率が、アメリカおよび中国産ビートパルプより高いことがわかります。

また飼料の栄養価の指標である可消化養分総量(TDN)においても、国産ビートパルプの方がアメリカおよび中国産ビートパルプに比べて優れていることがわかります。

産地による消化率の違い

ビートパルプのアンモニア軽減

「ビートパルプは無理なく アンモニアを軽減します」

図3にルーメン内における蛋白質の消化機序を示しました。

まず、分解性蛋白は微生物によってアンモニアに分解されます。一方、炭水化物も蛋白と同様に微生物によって分解されますが、微生物は炭水化物分解時のエネルギーを使ってアンモニアから菌体蛋白を合成し、微生物自身も増殖します。

分解性蛋白と炭水化物のバランスがとれている場合は問題がありませんが、分解性蛋白を過剰に摂取すると微生物の分解が追い付かなくなり、余剰のアンモニアはルーメンから肝臓に運ばれ、尿素に合成されます。肝臓にとってアンモニアから尿素を合成することは、とても負担がかり、ダメージを受けます。

しかしビートパルプを給餌すると、配合飼料と比べてルーメン内pHを安定させながら、余剰のアンモニアを減らすことができます。

図4に各飼料を採食した後のルーメン内アンモニア態窒素の変化を示しました。ビートパルプを給与した場合は常に低値を示しています。

ビートパルプはルーメン内の微生物に負担をかけず、無理なくルーメン内のアンモニアを軽減することができます。

ビートパルプのアンモニア軽減