DFAⅢ(Difructose anhydride Ⅲ)とは?

「フラクトース2分子が結合した難消化性のオリゴ糖です」

DFAⅢはダイフラクトースアンヒドライドⅢ、2フラクトース無水物の略称です。DFAⅢはチコリー(写真1)の根に含まれるイヌリンから合成されます。イヌリンにはフラクトースが含まれており、酵素処理後にできたフラクトース2分子が結合したものがDFAⅢです(図1)。

DFAⅢ(Difructose anhydride Ⅲ)とは?

牛がDFAⅢを食べるとどのように消化されますか?

「ルーメン内で分解されにくく、十二指腸まで到達します」

牛が食べたエサはルーメン内の微生物によって分解され、そこから牛が利用できるエネルギーが作られます。図2は培養されているルーメン液中における糖の分解性を調べたものです。DFAⅢは他の糖類に比べて、ルーメン内の微生物による分解を受けにくい性質を持ちます。

表1は乳牛に各DFAⅢ量を給与した際の十二指腸到達率(%)を示したものです。DFAⅢを50gおよび100g給与した場合、それぞれ約7割のDFAⅢが十二指腸に到達していることがわかります。

以上より牛がDFAⅢを食べると、ルーメン内の微生物による分解をほとんど受けず、約7割のDFAⅢが十二指腸まで到達します。

牛がDFAⅢを食べるとどのように消化されますか?

DFAⅢは十二指腸でどのような働きをしますか?

「腸上皮細胞のタイトジャンクションに作用し、カルシウム(Ca)の吸収を促進させます」

図3左のように十二指腸におけるCaの吸収は2通りの様式があります。まず1つ目は、活性化ビタミンDの作用で腸上皮細胞内を通過し体内へ吸収される能動輸送です。これは活性化ビタミンDの作用次第で吸収能力が変わります。2つ目は、Ca濃度の高い方から低い方へ細胞間を通過し体内へ吸収される受動輸送です。これは細胞間にあるタイトジャンクションという結合が通路を狭くし、Caの通過を制限しています。

DFAⅢはこのタイトジャンクションに働きかけ、細胞間の通路を広くすることで、Caの通過をスムーズにします(図3右)。

DFAⅢは十二指腸でどのような働きをしますか?

分娩前後の乳牛にDFAⅢを給与することはどのようなメリットがありますか?

「血中Ca濃度が低下すると十二指腸上皮細胞のタイトジャンクションに働きかけ、Caの吸収を促進し、血中Ca濃度を正常値に戻そうとします」

DFAⅢは十二指腸に到達すると、図4のように腸上皮細胞間をつなぐタイトジャンクションに働きかけ、細胞間にあるCa等を通す通路を広げます。通路が広がるとCaが濃度の高い方から低い方へ、腸管側から体内側に通りやすくなり、体内へCaの吸収が促進されるようになります。

図5は乾乳後期から分娩7日後までDFAⅢを給与した群(DFA群)と給与しなかった群(対照群)の血中Ca濃度の推移を示したものです。DFA群では分娩直後から分娩2日後まで対照群と比べて、血中Ca濃度が高くなっていることがわかります。

以上より、DFAⅢは十二指腸のタイトジャンクションに働きかけCa濃度の高い方から低い方へCaの吸収を促進させることで、血中Ca濃度の回復を早めることができます。

分娩前後の乳牛にDFAⅢを給与することはどのようなメリットがありますか?

新生子牛にDFAⅢを給与することはどのようなメリットがありますか?

「免疫グロブリンG(IgG)の吸収を促進させ、免疫力を向上させます」

新生子牛は母牛からの初乳を飲むことで初めて免疫グロブリンを獲得します。免疫グロブリンは病原菌と戦う抗体のことです。牛の初乳中に含まれるIgGおよびM、Aの含有率を図6に示しました。初乳中に含まれる免疫グロブリンの約90%がIgGであることがわかります。

新生子牛が生後できるだけ速やかにIgG濃度ができるだけ高い初乳を飲むことで血中IgG濃度が高くなればなる程、その後の生存率が高くなるといわれています。図7は初乳にDFAⅢを各量混ぜて、24時間以内に2回給与した子牛の血清IgG濃度の推移を表したものです。DFAⅢを給与した子牛の血清IgG濃度が給与しなかった群に比べて向上しました。

新生子牛にDFAⅢを給与することはどのようなメリットがありますか?