炭水化物とエネルギー ~飼料中炭水化物の区分~

 

飼料成分の中で炭水化物に区分される項目は、揮発性脂肪酸(VFA)、糖、でんぷん、ペクチン、ヘミセルロース、セルロース、リグニンとなります(図1-1)。

牛の餌の大半は植物ですが、植物細胞の構成成分の中で、細胞質の部分に含まれる炭水化物は “糖” と “でんぷん” になります。植物の細胞壁を構成する成分は繊維質と “ペクチン” に分けられ、ペクチンは細胞壁の繊維同士の接着剤の様な役割を持っています。糖・でんぷん・ペクチンは消化速度に違いはありますが、大半が消化される消化率の高い成分になります。

残りの繊維質の内、酸性洗剤で溶けてしまう部分が “ヘミセルロール” で残りが “ADF”、硫酸で溶ける部分が “セルロース”、残りが “リグニン” となります。ヘミセルロースとセルロースはある程度消化されて、リグニンはほとんど消化できない繊維になります。

細胞の構成成分以外に、乳酸や酪酸といった揮発性有機酸も炭素と水素と酸素で構成されているので炭水化物として扱われます。飼料設計ソフトの中では、酢酸や酪酸はルーメン内でこれ以上分解されないので消化速度は0で設定されており、乳酸はルーメン微生物の作用を受けて酢酸や酪酸に発酵されるので消化率が設定されています。

炭水化物区分の内、糖は速やかに利用される成分で、飼料としてはショ糖の直接給与や、糖蜜に多く含まれています。でんぷんは大きくひとくくりにされていますが、飼料の種類や加工することによって消化速度を変化させることができます。トウモロコシや、その加工品、大麦などの穀類に多く含まれています。

ペクチンは消化速度が穏やかかつ消化率が高い区分で良いとこばかりの様に思えますが、繊維ではないのでウシの反芻には寄与しない点に注意です。飼料としてはおなじみビートパルプや、シトラスパルプ、柑橘類の皮の部分に多く含まれています。

総繊維(NDF)は消化に時間がかかる成分ですが、繊維が無いと牛は反芻できません。粗飼料全般、特にイネ科の草に多く含まれています。これらの炭水化物に区分される成分がルーメン内で微生物に発酵されると最終生産物としてVFAが生産されます。